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INTERVIEW

弱みは強みになる。足場工事業 株式会社山上建設 山上卓也氏

栃木の中でも目立って開発が進む「上三川」と呼ばれるエリアに、若者が続々と入社する足場屋がある。
株式会社 山上建設。
社長は山上卓也、24歳。

会社のホームページを覗くと、その評判は広がっているのであろう他社メディアのインタビュー記事が掲載されていた。

建設業界ではどうしても
年齢が若い=経験が浅い=信頼できないと思われがちだが、この日行ったインタビューでその固定観念は完全に覆された。
年齢だけでは判断基準にならない。
若さを言い訳にしない本気の取り組みで着実に実績をあげる同社について話を聞いた。

16歳で鳶職へ。起業3年で起こった変化

山上が鳶の仕事に就いたのは、16歳の時。
鳶職人として活躍する兄の姿に影響を受けた。
そして、この頃からずっと同じ道を歩んでいるのが現在の山上建設 専務田嶋である。

夏の炎天下での重い資材の積み下ろしや、想像以上にガッツのいる仕事に初めは四苦八苦しながらも、その苦労を傍で分かち合ってくれる仲間と、仕事も遊びも付き合ってくれる先輩たちに恵まれ、少しずつ現場に慣れていった。

転機は19歳の時。勤めていた会社の社長が突然いなくなってしまう。
その際元請企業が雇い入れてくれたことが功を奏し(不幸中の幸い?)、現場とそれ以外のことも徹底的に学べるチャンスを得た。

ここで経営に必要なことはほとんど学ばせてもらったという。
山上が事務方の業務を習得し、田嶋が現場を円滑に回す為のノウハウを身体に叩き込んだ。この頃すでに2人のチームワークは出来つつあった。

少しづつ人脈を広げ、21歳の時に仲間と3人で独立。

更にその2年後、平成28年の12月に「株式会社山上建設」として法人化を果たし、現在15名の社員を抱えている。
ここに至るまでの過程で、山上は仕事に対する考え方が180度変わったという。

「独立当初はハッキリ言ってお金が理由でした。それがモチベーション。
大きな目標もなく、大した夢もなく、目先のお金に囚われていたけど今では全て変わりました。
それは出会った方々のお陰です。

先のビジョンを見据えて一歩引いて考えられるようになりました。
今まで頭ごなしにああじゃない、こうじゃないと伝えてきたものが、今はワンクッション挟んで第三者の視点から伝えられるようになった。

会社の利益を上げてそれで会社を大きくして、色んなお客様と関わり建設業にもっと深く関わりたい、入っていきたい。自分たちの会社をもっと多くの人に知ってほしいという気持ちが増えました。」

若いって言われるからこそ、どこよりも力を入れる教育

山上が何よりも熱を注いでいるのが社員教育だ。
この会社では経験者をヘッドハントするよりも、未経験者を育てることを大事にしている。彼らが育てば、自社のブランドになるからだ。
未経験からスタートした人間がいることが、建設業にまだ足を踏み入れていない人の入職へのハードルを下げ、人材確保に繋がる。

月に一度開催している安全集会では、ヒヤリハットや周囲の事例を共有し議論するそうだが、そこでは未経験者の意見が大切だと語ってくれた。

「これまで月一の安全集会を続けてきて、実際に若手の子たちが大切なことに気付いているのがわかってきました。
挨拶・礼儀・時間厳守など、慣れるに連れて蔑ろになりがちなことに対して意見を言ってくれるんです。
建設業も、技術だけではなくサービスマン化していかなくては氷河期を乗り越えられません。
そういった初心に返らせてくれる発言や、自分たちが組む足場は”商品”なんだといった発言が出てくることが非常に重要で、常に意識として頭にあるからこそいざ現場に行っても営業に行っても発揮することができると思うんです。

今後はそこにロールプレイングを加えていきます。
駐車場の空いているスペースを活用して、実際に足場を組み立てて危険なポイントを再確認する。
また、普段は班に分かれて現場に行きますが、ロールプレイングをやることで誰がどこまでできるのかが明確になります。
挨拶から全ての流れを新人含む全員の前で見せることが皆にとっていい刺激になると思っています。」

山上は日頃、営業に行くと”若いと危なそうだから”という理由で断られることがあるという。
年齢が判断基準になっている文化は簡単には変えられない。
しかし、少なくとも山上建設はその現実を真摯に受け止め、どこよりも安全には敏感だ。

そして世間で絶えず叫ばれている社会保険についても、従業員はみな加入させている。
社員になりたくない、保険より手取りが欲しいと言われても、何のための保険・年金なのか、将来家庭を持ったときのことを踏まえ説明しているそうだ。
ここまで”教育”が出来ている会社はどの程度あるのだろうか。

同じ失敗は繰り返したくない

インタビュー中に会話が脇道に反れ昔話になると、過去の怖いもの知らずのやんちゃだった一面もちらっと覗かせた山上だったが、実際に対面で話してみると刺々しい突っ張った印象は全く無い。
むしろ人の話をものすごく真剣に聞く。
謙虚に人の話を聞き、丁寧に話をするその姿勢は20代前半としてはちょっと頭抜けている。
やんちゃしていた人間が数年でここまで変わるには何か転機があったのか?気になり聞いてみた。

山上が話してくれたのは仲間と3人で独立したばかりの頃の話だ。

専務の田嶋と同様に、山上が16歳の頃からずっと共に仕事をしてきた仲間がもう一人いた。
5年以上傍で一緒に働き、彼の危なっかしいところを山上がサポートしながら仕事を教えていたそうだ。

しかし独立後の責任の大きさは山上にとってプレッシャーとなり、仲間に対してもかなりキツく当たってしまっていた。
それを理由に、独立半年後、その彼は退職した。

「会社をやっていて、一番悲しいのは人が辞めていくことです。自分の事ばかり考えて、その子の気持ちを考えられていなかった。

独立したら、シビアになって、なり過ぎて、スピードも要求されるので対応しきれなかった。
仲間が辞めていった理由は自分にある。それが一番の失敗です。
その経験が自分を変えてくれたんだと改心して、もう同じことを繰り返さないようになりました。
物の伝え方一つ。色んな視点から見て、ちゃんと相手がイメージを持てるような伝え方を心掛けています。」

話を聞きながら納得した。この経験から、山上の中で優先順位が大きく変わったのだろう。失敗を失敗で終わらせず、自分自身を変えたからこそ現在多くの職人が集まる会社へと成長したのだ。

若いという弱みは強みに変わる

最後に、建設業で働く若者を応援するような感動的な話を聞かせてくれた。
一年半前、職長になりたてだった一人の従業員の話だ。

その時のクライアントこそ、長い間「年齢が若い」などの理由でなかなか営業が通らない会社だった。
しかしいくら断っても折れない根性を買って、初めて新築工場の仕事を依頼してくれた。

山上はそこに小曽根という社員を配属。
そして、彼にとってこれが職長として初めての現場だった。

慣れた職人なら特段問題点はない小規模な現場だったそうだが、小曽根はその現場に2週間を費やしじっくり考えた。
だがいざ現場に行ってみると、状況が変わり構想通り進めることができず混乱してしまった。
依頼主からの最初の評価は最悪だったと山上は言う。それは山上が自分の予定をキャンセルして謝罪のために訪問するほどだった。
急いで足場を組み直し、図面の見方を小曽根に再確認させ最終形態をイメージさせた。

そして最後、現場が終わりクライアントから言われたのは意外な言葉だった。

「小曽根さんは職長としての経験も浅いしまだまだだと思う。
でも毎日しっかり考えてきて休憩も使って率先して動いてくれた。細かいことも沢山聞き入れてくれて、意欲がすごく伝わってきた。だから、これからも仕事をお願いするよ。」

この一件以降、クライアントは小曽根を専属の職長として指名で仕事をくれるようになった。
これには山上も嬉しかったという。

「若い子で仕事に熱がある子っていうのは珍しいし、ちゃんと教育しているのが伝わったと言っていただきました。見てくれている人は見てくれてるんだなって、本当に嬉しかった。
それが小曽根にとって更なるやる気になり、自分の仕事を見つめ直すいいきっかけになったと思います。
現場で予定が変わってしまうことはよくあり、仕方のないことです。
彼も最初は焦ってしまったものの、そこで臨機応変に対応する柔軟性を学んだのだと思います。
人に言われたことを素直に聞けるのも若さゆえ。
この時は足場を組み直すことができたことがまだ幸いでしたが、そういった危機感も持てるようになり本当に成長しました。
ダメなところを克服したら強みに変わると実感した出来事です。」

失敗しても諦めず果敢に立ち向かう小曽根の熱意と、見放さずチャンスを与えてくれたクライアント企業の応援したいという気持ちが伝わる。

建設業界では若いやつは続かない、すぐ辞めるとよく言われるが、その裏で一生懸命に奮闘している若者も確かにここにいた。

年齢は一つの目安であるかもしれない。
実績や経験も多くあるに越したことはない。
しかし、50年、100年と続く企業にも必ず1年目があり、失敗を重ねて成長をしている。

重要なことは、環境や、失敗に対して柔軟になれず成長が止まるのか、痛いことに耳をふさがず、具体的に失敗を改善し成長する企業なのかということだ。
そう考えた時、若いからこその柔軟性は圧倒的なアドバンテージへと変わる。
自社の課題にまっすぐ、建設業界にまっすぐ向き合う同社の歩みは、独立して法人設立を目指す若い職人たちの一つの道筋になっていくに違いない。
これからの業界を担う山上建設の今後を建設ビレッジでは末長く追いかけて行きたい。

(文・インタビュー/黒田実緒)

事業内容:鳶・足場工事業
T E L :0285-39-8150
所在地:〒329-0617 栃木県河内郡上三川町上蒲生2000番

 

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