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INTERVIEW

建設職人甲子園女子部のこれから。

労働力が減少する昨今、女性の働き方は見直され、
ゼネコンから来る現場監督には
女性の姿を見かけることも多くなってきたが、
職人の中にはまだまだ少ない。

その間口を広げようと立ち上がった女性職人。
「建設職人甲子園 女子部」

個性際立つ彼女たち。
彼女たちは一体何を目的とし結成され、
何をしようとしているのか。
その全貌に迫る。

女子部の正体

3月、五反田にある飲食店。
今日はこの店で建設職人甲子園 女子部の取材だ。
入り口すぐの個室から、女性たちの笑い声が聞こえる。
何を頼んでも間違いのないこの店は、メンバーの一人である長口の行きつけ。
ここで初期メンバー3人が集まり、話し合いが行われた。

舵を取るのは、女子部発起人である深山じゅん。
以前このコラムにも登場したことのある彼女は、
千葉でインテリアJUNとして一人親方で活躍するクロス職人であり、
2人の子を育て上げた母。
当日、待ち合わせになかなか訪れず、
方向音痴な一面も見せる陽気なムードメーカー。

そして二人目のメンバーは、
五反田で左官・防水工事業を主とする職人会社、
株式会社メガステップの親方、長口修子。
物静かな印象の強い彼女だが、気心が知れた女子部では一味違う。
おっとりした口調で親方ならではの鋭い意見を述べる現実派。

最後に紹介するのは、女子部一番の若手。
千葉のK's塗装で技術習得に勤しむ職人二年目の、福永美沙紀。
見かけに依らず、はっきりとした物言いで
周囲が圧倒されることもしばしば。
この女子部の活動に若者目線を取り入れてくれる頼もしい存在だ。

建設職人甲子園 女子部はこの3人から始まった。

女子部設立の経緯は意外なほどゆるい

今勢いに乗って会員拡大の一途をたどる団体。
「一般社団法人 建設職人甲子園」

縁の下に隠れた建設業界に旋風を巻き起こすべく、
関東を始め複数の地区に活動を拡げる。
建設職人たちの学び・成長に繋がる様々なイベントを企画し、
地区ごとに開かれる大会では、
職人がステージから自分たちの取り組みや仕事への想いを伝え多くの人々に感動を与えている。

彼女たち3人も、この建設職人甲子園を通じて知り合った

とある会で突然ステージに立たされた3人。
この時まだ会話をしたこともなかった彼女たち。
業界でも貴重な存在である女性職人を紹介させ
て欲しいと頼まれた。
聞いてないよ…と困惑しながらも、
身近に自分以外の女性職人がいることに驚いた
という。

この日をキッカケに関係は急接近する。

初めて3人で飲みに行った日。
現場では決して口に出来ない女性ならではのある
ある話や、お互いの仕事について次から次へと
湧き出る興味で話は尽きず、気が付いたときに
は朝を迎えていたというほど盛り上がった。

それからの定期的な飲み会が、
「女性」「職人」という同じ立場の彼女たちにとって意見交換の場になっていく。

このコミュニティが、いつしか職人甲子園の中で注目を集めだし、
次第にどこからともなく "女子部" と呼ばれるようになったのだ。

そうと決まれば周りは放っておかない

流れに任せなんとなく立ち上がっていった女子部だったが、
そのキャッチーなネーミングからか、名前だけが独り歩きする。

「じゅんちゃん、あの女子部って何やってるの?」

聞かれる度に、答えに困った。
中心人物である深山は、次第にもどかしさを感じだす。

(…そんなこと言われても…。まだ飲み会やってるだけだし…。)

一方的に寄せられる周囲からの期待。
しかし、自分に何ができるのかわからない。
それは他の2人も同じだった。

巡ってきたチャンス

そんな彼女たちに、突如好機が訪れる。
女子部全員がそれぞれの力量を発揮できる現場が舞い込んできた。

部屋数の多い団地の内装リフォーム

空間の演出は部屋ごとに素材も色彩も変え、バリエーションを効かせた面白い案件だった。
深山は一つ返事でその現場を引き受け他のメンバーに声をかける。

クロス・左官・塗装。
全員が揃ったその日、
K's塗装の福永の先輩や、深山の幼馴染も応援に駆けつけてくれた。

「音楽かけよ!」
「何がいい?」
「こっち天井剥がし終わりましたよー!もっと剥がしたい!次はどこ!?」
「それどうやるんですか?教えてー!」

いつもの現場以上に笑いが飛び交い、ノンストップの会話。
女性はマルチタスクが得意だと言うが、確かに彼女たちの手は正確に動く。

他業種と現場が重なることの少ない彼女たちにとって、
この日は勉強するのに絶好の機会だった。

初めて工事現場に来たという深山の友人も、
全くの素人な自分にもできることがあると知り、
次はいつ手伝いに来れるのかと深山に催促するほど
「男の仕事」という建設業のイメージが一新されたという。

この場にいた誰もが、手応えを感じた。

女子部の向かう先。

五反田でのミーティング。

「女性だけで家を創りたい」

3人の想いは一緒だ。
ぼんやりと描いてきた夢が現実味を帯びた今、
改めて本質を振り返る。
話し合いは五時間以上にも及んだ。

誰かに言われるからやっているのではない。
女性の持つ可能性を自分たち当事者から
建設業界に示したい。

そこで壁にぶち当たるのなら、
みんなでぶつかった方が乗り越えるのは早い。
3人共、それが楽しいからやっている。

ここには煩わしい建前も制約もない。
誰よりも大きく手を広げ、
建設業を知る人も知らない人も
息抜きできる場所。
それが彼女たちにとっての女子部の姿。
少しの興味さえあれば、
参加することにそれ以上の理由は必要ない。

気軽に来れる飲み会やイベントを通じ、少しずつ人々の建設業に対する関心を湧き立たせ、
共感者を呼び、仲間を増やし、やがては集まった女性職人たちの技術で、家を創る。
建設職人甲子園 女子部はそのためにあると、皆が確信した日だった。

3人がぽつりと立っていた、「女子部」という何もなかった更地に、
多くの助けを受けながらやっと基礎が出来上がった。

次の一歩

そうこうしている間にも、トントン拍子で次の企画が決まっていく。
それだけ世間の注目が集まっている証だ。

4月9日、千葉のホームセンターで開くDIY教室。
左官や塗装を体験し、作った作品を持ち帰れるイベントで、親子での参加も可能だ。
今後の最新情報は
「建設職人甲子園 女子部」のFacebookアカウントから
チェックすることができる。

この取り組みがより多くの人々へ届くよう、今後も彼女たちを追い続けていきたい。

(文・インタビュー/黒田実緒)

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